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農業も他産業と同じで辛くもあれば楽しくもある
豊後大野市
川井 元
川井 元
就農の経緯について

 大学卒業後、財閥系損害保険会社で19年間、保険営業及び自動車事故の損害査定(示談代行)をしてきました。特にノルマは厳しく、一に利益、二に利益、三、四がなくて五に利益との社風でした。自分だけならよかったのですが、部下や代理店を激しく叱責することもしばしばあり、叱るのも疲れてきた。自営業で自分だけでやれたら幸せだし、転勤も定年もない世界はいいだろうと考えた。小さい頃植物が好きだったので農業が良いと考えはじめました。収入が安定していたため嫁さんが反対したら諦めようと思いましたが予想外に了解が出て就農しました。
 CFP(上級ファイナンシャルプランナー)、一級ファイナンシャルプランニング技能士(資産運用設計分野)、損害保険特級、生命保険大学、証券外務員一種、ARM(米国公認リスクマネジメント士)等の今では何の役にも立たない資格を多数持っています。

就農について個人的アドバイス

 1. 農業を産業として考えると
 農業は大きく儲からないが、家族が生きていくそれなりの所得が得られると考えています。今までも多くの企業が参入し撤退していった。今農業をやっている有名企業に話を聞きに行くと社会貢献の一環やイメージアップが目的で農業単独では経営していくだけの利益がでないとのことだそうです。だから種苗や農産物の流通企業しか上場企業がない。農業は大きくすると効率面や栽培手順に無駄がでる側面が大きい。今からなら家族的規模の経営が結局一番良いかも?

2. 就農したら当面、成功することよりも失敗を避ける方がいい
 夜逃げや、トラクターの差し押さえ、10年たったら自分以外の一緒に就農した同期は皆農業をやめた等の話もあり、うまくいっていない方も多数いる。新規就農すると周りは皆比較的成功した就農者(だから周りにいる)であり、マイナスの情報がなく当面青年就農給付金もあることから農業を甘く見てしまう。計画はやや保守的に組んで、どんな人が失敗しているかよく観察し、まず生計を立てられる規模で経営を安定させ、規模拡大はそれから考えた方がよいかと思います。

3. 教えていただく農家は農業で生計を立てている比較的年齢の近い方がいい
 名人と言われる農家は既に年金生活者であり、栽培技術は一流だが農業の仕方が新規就農にマッチしていないケースがある。農外収入のある人とない人では条件やコスト意識に大きな差がある。基本的に収入のすべてが農業収入で、ジェネレーションギャップも考慮すると同世代よりちょっと上ぐらいの方がいればその人一本で教えてもらおう。また親が農家をやっていた二世の就農者も根本的に競争条件が最初から違うので教えていただく方としては良くないでしょう。

4. 言われたことをきちんとできる人が案外少ない
 指導農家や先輩農家の方から、例えば農作物にこの症状がでたらこの肥料だとか、栽培初期にこの農薬を散布しなさい等アドバイスいただけるわけですが、忙しかったからとか費用がなかったからと言ってきちんとできない方がかなりの割合で存在する。農業で生計を立てている人から言われたことをきちんとできれば就農は高い確率で成功する。

5. 就農後も考えることを怠らない
 行政機関や指導農家に言われ、自分で考えずに設備投資や品目、販路を決定する(盲信する)人がいるが、自分でできるかは自分しかわからない。自分の決定が適切か熟慮しよう。

6. コミュニケーション能力が最重要
 農業は情報戦であり、どの農薬が効くか?どこに行けば適切な農機が貸してもらえるか?どこに良い農地があるか?どう栽培すれば収量が上がるか?どこにいい肥料が売っているか?どういう節税対策があるか?等はすべて様々な人から教えていただくことになる。早く情報をつかんだ方が早く対応でき、失敗のリスクを下げることができる。よく「人付き合いが苦手だから農業をやろう」と考えている人がいるがそれは大きな間違いである。社交性がないと有益な情報を継続して得ることができなくなり、農業を続けられない。

7. 田舎だから皆仲良くやっているわけではない
 就農先は田舎が多いと思われるが、田舎でも近隣住人とのトラブルの絶えない方や地域に溶けこめない人もいる。都会と同じである。新しく地域に入ると親切心からいろいろご指摘いただくことも多いが、すべてに応えられるわけでもない。地元の人でも周りとうまくやっていけない人もいるので気にしない事が賢明です。
8. 農業も資金力で勝負が決まる

 こういうと夢のない話だが、どんな商売でも現金があれば基本的には苦労しないことになる。農業においても、同じ資材で手元にお金がないため農協の掛買(いわゆるつけ)で買えば高いが、現金があれば農業系小売やホームセンターにいって安く買うことができる。また軽トラやトラクターを手持ち現金で早く購入し、初期に比較的大きい償却資産を積み上げることで翌年度以降の資金繰りをグッと楽にできる。よく効くがやや値段の高い農薬でも躊躇することなく散布でき病害虫を防ぐ(収入減を防ぐ)ことができる等がある。ファイナンシャルプランナーとして申し上げると他にもたくさん例がありますが、きりがないので・・。つまり現金を持っている人はより有利に、持ってない人はより不利になるという原則は農業においても他産業と一緒です。就農するなら初期投資分以外にもできるだけ自己資金を貯めておこう。農業もあくまでビジネスであるとの割り切りが重要です。

9. 失敗した時どうするかも考えておこう
 補助金をもらっているからだとかカッコが悪いからといって生計を立てていける見込みがないのに農業を続けている新規就農者も存在する。ずるずると数年いって借金をして離農するくらいなら、借金する前に離農した方が傷も浅く年齢的に次の就職も有利である。特に家族のおられる方は就農する時には、自分なりのポイントを決めて、もしうまくいかなかったらどうするか?も考えておこう。

最後に

 家族と共に楽しく、自分の好きな作物で農業ができ、上司や部下の板挟みに会うことも転勤も定年もなく、子供は自然の中で元気に走り回り、地域の人や同じ作物を作る仲間とワイワイやりつつ、生活していける収入が得られている今、私は幸せである。家族やお付き合いいただいている周りの皆様にただただ感謝である。